不器用

ハサミで真っ直ぐ切れやしないし、お箸もまともに持てやしない。
裁縫なんてもってのほか。「あんたは不器用だから」と親にも諦められる。


器用な人はスグにできるのに、何度やっても上手くいかない。
歯がゆい。悔しい。悲しい。比べられたくないのに比べられ、自分だけができもしない。 


でも、スグにできないからこそ、いったん立ち止まれる。
器用な人が、一段飛ばしにするプロセスでつまづくからこそ、
深く掘り下げることができる。


最後の宮大工棟梁・西岡常一氏は言う。

「はじめ器用な人はどんどん前へ進んでいくんですが、本当のものをつかまないうちに進んでしまうこともあるわけです。だけれども不器用な人は、とことんやらないと得心ができない。こんな人が大器晩成です」と(「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」より)。

では、不器用さに挫けないためには、どうすればいいんだろう。

大切なのは、「開く」ことじゃないか。
できないからこそ、人前でやってみる。できないからこそ、誰かに教えてみる。


確かに、失敗してしまうのは恥かしい。
思い通りにいかないのは、むず痒い。


しかし、不器用だからと殻に閉じこもってしまっていると、
いつまでも才能は開花しないのではないだろうか。

器用なことは素晴しい。
でも、同じくらい、不器用なことも素晴しい。


不器用は、決して、マイナスばかりではない。
勇気をもって、「開く」を続けていけば、


不器用が天賦の才であることを、
肚の底が実感するはずなんだ。

                                        書法道場師範 武田双鳳

書法家・武田双鳳

書を通じて人生を豊かにする場所をつくっています。

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