あな番、タピる、サブスク…みなさん、ご存知ですか?今年の「流行語大賞」の候補をみると、自分が、いかに流行に乗り遅れているか、知らしめさせられます。リサ、ヒゲダン、キングヌー…NHK紅白歌合戦も、ますます知らない歌手が増えていきます。


いまの僕らは、インターネットで情報が瞬時に公開され、新しいものが次から次へと生み出されます。日々の興味に尽きることのない、とても恵まれた時代に生きています。しかし、周りの大人を見渡せば、どうでしょう。いつもワクワクしている人よりも、なんとなく虚しそうにしている人の方が多いようにも感じます。


情報も食料も、これだけ恵まれているのに、なぜ、満たされないのでしょう。それは、絶えず何かを外に求めているからではないか。流行りに興味を移り変わらされ、心が分散しているからではないか。じっくり取り組むことができず、軸足が定まらないからではないか。


皆さんが稽古に励む書道には、厳しい面もあります。心が散っていては、たった一本の線すら、まともに書けません。軸足が定まらないと、墨すら磨れません。ただ、書道には厳しさがあるからこそ、心の集中を生み、軸足を安定させ、虚しさの渦から引き戻してくれるのです。


いまが先の見えない不確定で不安定な時代だとしても、何かに腰を据えて取り組んでみる。情報に流されず、ひとつに魂を燃焼させてみる。そうやって、自分の「生」の素晴らしさを発見し続けていく。そんな豊かな人生を歩むツールとして書道を活かしていただければ、幸甚の極みです。


書法道場師範 武田双鳳

書法家・武田双鳳

書を通じて人生を豊かにする場所をつくっています。

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